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![]() 今回は下顎造型の最終編、雛形原型からスーツへの投影と変遷について書き留めることにする。 これまで下顎、特に顎角部を中心に書いてきたが、同部周辺、特にゴジラのスーツを見ていく上ではずせないメルクマールがこの雛形原型に存在する。左図(1)に示したような頬部隆起の後方部から首へと続く襞がそれである。ファーストモデルでは確認されず、セカンドモデルよりそれは造作されはじめたようだ。サードモデルでは左側に比較して右側において顕著に造られている。図(2)はサードモデルの正面画像であるが、赤○印で示した部分は一見すると顎角部(エラの一部)に見える。しかしながら、拡大画像で良く確認すると先の首へと続く皺がオーバーラップしてそのように見えているのがわかる。 1号スーツについては、以前にも記したようにフォルム全般にわたり原型を忠実に踏襲した形で造られている。フォーカスをあてている下顎についても同様、雛形ほど、細かな造りにはなっていないものの、凡そその原則(上顎の下顎をおさめる窩の部分および口角部分が延長し、突起様にのびた一部分が下顎の体部に付着している)は守られているように思われる(図(3))。詳細かつ明瞭な画像が手元にないのではっきりしないが、概ね左右対象に造られているようだ。また、首へとつづく襞も形づけられている。この襞はその後のスーツモデルにおいても受け継がれていくが、もっとも顕著に強調されているのがキンゴジ(図(4))である。 ■
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by hisaon13
| 2008-02-23 22:37
| 造型関連
![]() 本日は、昨晩のつづきでサードモデルの下顎における造作がどのようになされたかについて妄想をめぐらす。 造13にて引用したように松本明氏の回顧によれば、「(前略)それでこの位のネンド原型持ってって、で、アゴでもこうグッと張らしてね。牙をギュッとやって(中略)これでいくで—と、バーンと決めちゃった訳よ。(後略)」と述べられていることからも明らかなように、見映えの迫力増しにあったことは確かである。ただ、その造型を見る限り、細かな細工が施されていることから、氏の言われるような単純なボリューム増しということではなさそうで、何かお手本になるものがあったという推論が成り立つ。 先に記したように造型コンセプトには恐竜、そしてサードモデルではワニがキーワードとして出てくることから、めんどくさいので古代のワニに関して検索をかけてみた。そして、みつけたのがこのサイト。びっくりしたのはページ中の挿絵。件の下顎に非常に似ている。骨格も同時に掲載されているのだが、これからどのようにしたら、挿絵の様に復元されるのかはよくわからん(専門家が見ればそうなるのだろう)。このディノスクスはワニの先祖らしく体長は15メートルにも及ぶとされる。現存するワニの頭部についても調べてみたが、残念ながらそれらしきものは確認できなかった。 こうなってくると、別の視点、原点見直しということで阿部のデザイン画を確認してみたのだが、やはりソレはあった。左図のとおり、その原画における下顎の描写は非常に複雑になされており、サードモデルの造型に通じるものがあるようにみえる。 撮影スケジュールは非常に限られ、突貫作業の中で試行錯誤の造型作業であったことから、この造作は偶然の産物だったのかもしれない。 畑違いながら未知のクリーチャー創造という同じ使命を担った阿部氏と利光氏。勝手ながら、ここはデザイン画に対する畏敬の念が形づけたと考えたい。 ■
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by hisaon13
| 2008-02-14 22:39
| 造型関連
![]() 今日は、造12において触れて以来、やっとたどり着いた下顎、特に顎角部といわれるエラの部分(付近)の造型について書く。エラの部分といっても、正確に記せば上顎と下顎の接合する部分から下顎後方〜中央部といった方が正確かもしれない。 サードモデルにおけるこの部分は、前回の頬部隆起と同様に左右的にアシンメトリーの造りになっている。さらに、ファーストからセカンド・モデル(別パートで示す2.5モデル!?まで)とは明らかに異なる造作がなされている。 図①はおなじみの左側面観であるが、一見するとエラの張った力強い骨格からなる肉食獣の様相を呈している。また、これも以前示した画像(②)であるが後方からみた様子からもエラのがっしり感らしきものが見て取れる。①の画像を拡大したものが③であるが、よく見ると顎角部(エラ)を構成しているのは上顎の下顎をおさめる窩の部分および口角部分が延長し、突起様にのびた一部分が下顎の体部に付着しているように造られているのがわかる。 おそらくこれには骨の裏打ちはない。もし、あるのであれば下顎は開閉できないからである。したがって、この構造物は上顎の下顎をおさめる窩および表皮と軟組織もしくは腱により構成されていると解釈するのが正しいだろう(っと、むずかしく考えたところで、造型中にはそんなことを考えて造っているとは思わんが…)。 ④は右側面観である。左側ほどボリュームはないものの、同様の構造物が確認できる。こちらを見た方が、この構造物が下顎に独立して存在するものではないことがよくわかる。 まだまだ、話は続くのであるが、本日、誕生日なのでこれまで。 ■
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by hisaon13
| 2008-02-13 22:46
| 造型関連
![]() 今回からサードモデルの頭部について記す。 頭部概形については定石どおりシンメトリックに造られているが、以前にも書いたように細かな部分では左右非対称になっている。現時点で、資料の少なさに加え洞察力の未熟さも手伝って、正直いって、正確なところは把握できていない。とにかく、表情が見る角度によってまるで違う個体のように変化するので、その解釈が本当にむずかしい。左図(①)のように、右側からの画像ではあるが、同じ対象物?と思うぐらいの違いがある。特に、(c)と(d)では照明方向はほぼ同じで、レンズの上下的な位置がわすかに異なるだけであろうと思われるものの、CMのもこみちではないが、撮影本番の作り顔と今起きましたってな具合の寝起き顔である。 今回は頬部の隆起を中心に見てみよう。まず、②の左右的な張り出し具合が左側でやや大きい。 この隆起は左側で一塊で造られているのに対し右側では非定形に2つに分断されたように構成されている。この分断された部分により口裂中央下端の形状が左右で異なっている。さらに、右側ではこの隆起より手前の部分のくびれがより大きく強調され、やや鼻先が下がった印象を与えるようになっている。この横に張り出した隆起の口角に近い部分での収束の仕方も違いがあり、表情の左右的違いに影響を与えている。右側では口角に向かってまとまっていくの対して、左側では口角の少し手前でやや上方に塊状を強調しながら終わっており、その下部にくっきりとした口唇様のラインが造作されている。 ②と③を見ればわかるように(左側からのアングルの写真が少ないので断言はできないものの)、正面からみた顔貌はほぼ同じように見えても、上記の点から左右的、特にアオリの様相はかなり違って見えるようになっているようだ。 ![]() 造型では頭部の角度を変更し、付け替えてみた。先は長い。 ■
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by hisaon13
| 2008-02-10 23:12
| 造型関連
![]() 今日はデザイン画をもとにファーストモデルを検討をしてみる。 造14においてすでにセカンドモデルとの造型上の違いの比較をしているので、頭部を中心に見てみる。概形および細かな造作は左右シンメトリックに仕上げられており、特徴的な点として頬部の隆起が鼻部〜眼窩部にかけて水平的に棚状に施されている点があげられる。これは、デザイン画の正面像から流用からだろうか。これらの隆起や眉等のパーツ外表面はすべてほぼ同一の面構成の中に配置されており、その輪郭線は卵状の球体で調子がほとんど見られない。パッと見の印象としては非常にシンプル、別の言い方をすればあっさりとしており、やはり迫力にかけると言わざるえない。サードモデルおよびスーツでは造作されている背鰭へと続くトゲがみられないことも抑揚のなさに一役かっており、唯一、歯牙の存在が生物感や迫力を与えているようだ。なお、眉の下端や上顎の口裂のラインなどは阿部の原画デザインをよく表現しているように見える。 ![]() 造型の方は、頭部の傾きがどうしても足りなく感じ、スッパリ落とした。やれやれ。 ■
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by hisaon13
| 2008-02-04 22:36
| 造型関連
![]() 前回に引き続き、デザイン画を検討してみる。 今回、資料をみていて気づいたことは利光が造型に利用した最終図案というのは複数あり、阿部の原案もほぼ素に近い状態でその一つ(勿論、別の人の手によリライトされてのことと思うが…)として利用されたのではないかということである。 左図1)中の注釈①で示すように、造型の参考にされている頭部スケッチは複数あり(元の資料画像では3点確認できる)、よく見ると微妙に各部が異なっているように描かれている。特に下段の図案(赤丸で囲まれたもの)は、検討用に提出された阿部の原案とよく似ているように見える。 検討会議に提出された原案画像はパースがついているので、画像処理ソフトによりパースの補正を行ってみた(②)。レンズ補正をかけて処理しているので、中心点から離れた部分には歪みが出ていると思われるが造型中のものとそっくりだ。 つづいて、2)に示すように、両画像の主要パーツを構成するラインを選び出し、色別に描いて比較してみたが、ほぼ同様な位置に各ラインがあることが確認できた。 なお、④で示した赤塗りエリアの部分は、その後の造型経過(雛形およびスーツ)で興味深い過程をたどる。このことは、また別パートで。 ■
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by hisaon13
| 2008-01-30 00:02
| 造型関連
![]() 左上の画像は東宝製作スタッフによるデザイン画を検討する有名な写真である(資料2より)。右上の画像は阿部によるデザイン画(原案のものと思われる)を拡大したものである。なお、資料によれば、阿部はこの画像とともに恐竜然としたイラストも用意したと記載されているが、その詳細は不明である。原爆のキノコ雲のイメージから描かれたデザイン画は頭部がまさにキノコ雲の形状で、これではあまりにも露骨過ぎるという批判が出たとされる。たしかに、拡大像を見ればそのとおりで、加えて言えば”獣”というよりは”人”のような様相である。最終デザインの決定までに2転3転したといわれており、特美監督の渡辺明がたまたま手元にあった『玉川児童大百科事典』にあるティラノザウルスやアロサウルスを加味してデザインしたところ、こちらの方が良いということになり決着をみたとされる(資料3)。 ライン下の右画像は利光貞三が造型中に見本としている最終デザイン案の拡大像である(資料3)。恐竜様に顔面が横長に変更されているものの阿部の当初のデザインを踏襲していることがわかる。また、造型中の別のスナップには下肢部分のデザイン画を見つけることができた。これらの画像を見る限り、利光はデザインを忠実かつ尊重した形で造型を進めたことがよくわかった。これらの関係の比較は次の機会にする。 ■
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by hisaon13
| 2008-01-27 00:58
| 造型関連
![]() ゴジラの第一デザインを担当した阿部和助は、香山滋が著した冒険小説『タンガニーカの砦』の挿絵を担当した縁により東宝側へ推薦・採用されたといわれている。 今回、この阿部和助についてWEB上で調べてみたが、独立する前に「少年ケニヤ」の作者として知られる山川惣治のお弟子さんをされていたらしい。その検索中、山川惣治について詳細に紹介されているサイトに出会った。著作権にも触れることなので、詳述は避けるがコンテンツ中の1つに「少年ケニヤ」は「ゴジラ」に影響を与えたというパートがあり、たいへん興味深く拝見した。 資料に山川惣治の名を見かけることはないが、間接的にせよその『創造』に関連したとはいえそうである。 ![]() このたびせっせとつけたモールドをばっさり落とした。1歩進んで、5歩後退したような感じである。 どうも、体躯は想像以上に太いようだ。現在造っているものとは、胸〜下腹部にかけてのでっぷり感が違っている。 単純に不足分を盛足せばいいというものではなく、その軸がずれれば、頭部や手足の相対的な位置が違ってくるわけで、振り出しに戻る可能性もあるためやっかいだ。 前回のブログ書き込み直後に、雛形原型の未見画像を得た。これまでの資料のものとは異にするものでセカンドモデルの一系のようでもあり、サードモデルの製作過程ともとれる、いずれにしても『?』がつく原型画像だ。また、別の機会に検証してみたい。 ■
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by hisaon13
| 2008-01-20 22:18
| 造型関連
![]() 今回は各雛形原型の造型順序について考えてみる。3モデルを一度に比較するのもたいへんなので、ウロコ状表皮とイボ(ツブ)状のものとの造型上の違いを列記して考察してみる。 1)頭部の大きさおよび表皮形状が両者で異なる。また、頭部の正中に対する向きが違う(ウロコ状ではやや頭を左側に振っている)。 2)下顎のつけねの形状が両者で異なる。 3)背びれの形態および配列が異なる。特にイボ状のものでは大きな背びれで構成される2列に加えて、その外側にさらに背丈の低いひれの列が追加されている。 4)イボ状の尾の先端が先細りが強くなり上方に向かいはねている。 5)眉の形状が異なる。イボ状では造作が複雑になっている。 6)イボ状では鼻筋が造られ、また鼻孔が大きくなり、鼻翼等も明瞭にされている。 7)頬部の隆起の形態が異なる。イボ状ではコブの形態が独立し、複雑化している。 8)上下顎の牙の配列が異なる。ウロコ状表皮ではやや下顎が突出し反対咬合になっている。また、イボ状ではいわゆる乱ぐい歯になっている。 9)首まわり。イボ状のものには、特に正面像からみると、酒井造型でとりあげられることのあるコブラひだらしきものがつけくわえられている。 10)イボ状では鎖骨〜肋骨(胸部)と腹にあたる部分が明瞭にの造り込まれている。 11)正面体部正中部を走るライン(以下、便宜的に胸線と呼ぶことにする)がイボ状ではみられる。 以上、イボ状表皮の原型で見られるウロコ状のものとの違いや造型上の特徴は、ほぼすべてワニ皮表皮のサードモデルにおいても見られる。これらのことから、造型行程を加味すれば、イボ状表皮雛形原型がセカンドモデルと捉えた方が合理的であると考える。 ![]() なお、資料2)のp38で『モールドが入る前の雛形』と紹介されている画像(掲載紙面の順序を考えるとウロコ状表皮の芯と思われる)は、左図の赤丸で囲まれた部分を見る限り、ウロコ状表皮からイボ状表皮への移行過程(モールドを落として、顔まわりや尾に手を入れた)のものと考えた方が良いのではないだろうか? ■
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by hisaon13
| 2008-01-16 22:50
| 造型関連
![]() 原点に戻るということで雛形原型・スーツ製作の流れを整理しておくことにした。 図は雛形、スーツ製作に関わる事項を時系列に沿って大まかにまとめたものである。なお、各パートの時間的配置、内容、画像等はこれまで引用してきた資料に加え、雲斎氏の運営されるHP上に掲載されている『初代ゴジラの謎を追う』を参考にした。 ■雛形原型 1)ファースト・モデル(阿部和助のデザイン画を元にした第1案となる原型モデル。魚の鱗状表皮)→2)セカンドモデル(イボ状表皮)→3)サード・モデル(最終採用案。ワニの表皮状) ■撮影用スーツ 1)1号スーツ(いわゆるNGスーツ)、2)2号スーツ(主撮影(全身像)に使用) 雛形、スーツとも時系列では番号順に進むが、スーツの制作は雛形原型サードモデルの完成をまだずに開始されていたとされる。また、資料2)によれば1号スーツと2号スーツともほぼ同時に製作されたとも書かれているがその詳細は不明である。 雛形原型の製作順序において、資料1)をはじめとして幾つかの関連本においては、イボ状表皮のものがはじめに製作されたと記されているものがある。資料1)ではこの仮説を支持するような記事が記載されているので下記に引用しておく。 『インタビューこれでいこうや渡辺明に聞く(インタビュー池田憲章・竹内 博) (前略) 一回か二回かね、作り直したんじゃなしに、このウロコなんだよ。丸いツブツブくっつけたんだよな。で、この丸いというのは、大人しいと言うんだよね。ネンドの原型にヘラで切っちゃあ菱形のウロコみたいなの付けたんだけど、そんなのダメだちゅうんで、じゃこんな感じはどうだということで、ネンドを千切ってギュッギュッと、押しつけていく訳よ。そうすると、何か怖い感じになるといいうので、要するにワニ皮みたいだよね。 (中略) それでこの位のネンド原型持ってって、で、アゴでもこうグッと張らしてね。牙をギュッとやって、後ろの背びれも、こう誇張したやつをさ、持ってってこれでいくで—と、バーンと決めちゃった訳よ。(後略)』 なお、資料2)の中で著者は、上記の製作順序に反論するかのようにイボ状表皮のものが第2案であると強調して解説されている部分がある。 自分も造形物をみる限り、ウロコ→イボ→ワニ皮の順が正しいと思う。このあたりは、次にする。 ■
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by hisaon13
| 2008-01-14 11:01
| 造型関連
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